前層のチェック列

Xを位相空間、FをX上の前層だとする。前層Fをアーベル前層と非アーベル前層に大別して、そのチェックコホモロジーを考える。

  • アーベル前層 : 可換環前層上の加群の前層と同じ。足し算引き算が出来る。
  • 非アーベル前層 : 加群の構造を持つとは限らない群の前層。可換群ならZアーベル前層とみなせるので、主に非可換群の前層が問題になる。掛け算ができる。

UをXの開集合族(被覆でなくてもいい)、FをX上のアーベル前層(=加群の前層)だとして、CC(U, F) は、チェック・コチェーンの系列だとする。CC-1(U, F) = F(∪(U)) として、負の次元部分も持つ系列。

  • …→CC-2(U, F)→CC-1(U, F)→CC0(U, F)→CC1(U, F)→CC2(U, F)→…

(-2)次元以下はゼロにする。この系列が余複体になるかどうかはまったく不明。δ-1:CC-1(U, F)→CC0(U, F) を断片化〈chipping | チップ化〉、δ0:CC0(U, F)→CC1(U, F) は差分と呼ぶ。

開集合の直和Σ(U)は、レベル0(0次の)モニター空間と呼ぶ。高次のモニター空間も定義できて、1次以上のモニター空間には、添字の置換群が点の置換として作用する。その作用に対して符号同変な前層(交代的前層)を定義できて、k次チェックコチェーンは、k次モニター空間上の同変な前層として表現できる。チェック系列は、k次モニター空間と置換同変前層(交代的前層)により表現できる。

チェック系列の、各次数(番号)における完全性が前層の特徴付けになる。

  • (-1)次で完全⇔断片化〈チッピング〉が単射 : Fは分離的〈separated〉前層
  • (-1), 0次で完全 : Fは層
  • 打ち切り列が (-1), 0, 1次で完全 : Fはマイヤー/ヴィートリス層

マイヤー/ヴィートリス層では、次の5頂点列が短完全列になる。

  • 0→CC-1(U, F)→CC0(U, F)→CC1(U, F)→CC2(U, F)→0

Fが可換環層R上の加群層で、Rが細層〈fine sheaf〉のとき、R上の任意の加群層はマイヤー/ヴィートリス層になる。つまり、マイヤー/ヴィートリス短完全列が得られる。

前層のチェック系列やその変型、あるいは非アーベル類似物を考えるのは役に立つようだ。ド・ラーム理論もこの形で説明できる。