位相の完備束

Xを集合として、X上のすべての位相からなる集合をTop(X)とする。

  • Top(X)⊆Pow(Pow(X)) ⇔ Top(X)∈Pow(Pow(Pow(X)))

Pow(X)の要素を「X上の集合」、Pow(Pow(X))の要素を「X上の集合族」または単に「X上の族」と呼ぶ。X上の集合族は、インデックスセットIを使って (Ai | i∈I) のようにも表す。A:I→Pow(X) であり、Im(A)⊆Pow(X) である。X上の集合族をそのまま(インデックス表示しないで)表すときはギリシャ文字小文字を使う。例: α = Im(A) = {Ai∈Pow(X) | i∈I} = {Y∈Pow(X) | ∃i∈I.(Ai = Y)} 。

Top(X)上に完備束構造を入れ、top:Pow(Pow(X))→Top(X) を定義する。top(α) は、「集合族αを含む最小の位相」の意味である。Top(X)上の完備束構造と、写像topを使うと、色々な位相の構成が出来る。

位相のミート

  • 定理[位相の共通部分] (τi | i∈I) が、(インデックス表示された)X上の位相の族のとき、\bigcap_iτi はX上の位相である。


次を示す。

  1. X∈\bigcap_iτi
  2. ∅∈\bigcap_iτi
  3. U, V∈\bigcap_iτi ⇒ U∩V∈\bigcap_iτi
  4. ∀λ∈Λ.(Uλ\bigcap_iτi) ⇒ (\bigcup_\lambdaUλ)∈\bigcap_iτi
  • 命題1 X∈\bigcap_iτi


各τiは位相なので、X∈τi; つまり

  • ∀i∈I.(X∈τi)

これより、

  • X∈\bigcap_iτi

  • 命題2 ∅∈\bigcap_iτi


各τiは位相なので、∅∈τi; つまり

  • ∀i∈I.(∅∈τi)

これより、

  • ∅∈\bigcap_iτi

  • 命題3 U, V∈\bigcap_iτi ⇒ U∩V∈\bigcap_iτi


U, V∈\bigcap_iτi を仮定すれば、

  • ∀i∈I.(U, V∈Ti)

各τiは位相だから、U∩V∈τi なので、

  • ∀i∈I.(U∩V∈Ti)

これより、

  • U∩V∈\bigcap_iτi

  • 命題4 ∀λ∈Λ.(Uλ\bigcap_iτi) ⇒ (\bigcup_\lambdaUλ)∈\bigcap_iτi


λ∈Λ に関して Uλ\bigcap_iτi を仮定すれば、

  • ∀i∈I.(Uλ∈Ti)

各τiは位相だから、(\bigcup_\lambdaUλ)∈τi なので、

  • ∀i∈I.( (\bigcup_\lambdaUλ)∈τi )

これより、

  • (\bigcup_\lambdaUλ)∈\bigcap_iτi

Top(X)のような、Pow(Pow(Pow(X))) の要素をギリシャ文字大文字 Γ, Φ などで表すことにする。念の為、文字の使い方は:

集合 集合の要素
Pow(X) A, Y, U, V など
Pow(Pow(X)) α, γ, τ など
Pow(Pow(Pow(X))) Γ, Φ など

定理[位相の共通部分]において、インデックス表示は本質的ではないので、次のように言っても同じである。

  • 定理[位相のミート] 任意の Φ⊆Top(X) に対して、Top(X)内にΦのミート〈下限 | 最大下界〉が存在する。

Φのミートを \bigwedgeΦ と書く。これは記号を変えただけで:

  • \bigwedgeΦ = \bigcapΦ

順序集合のミートが存在すれば一意なので、\bigwedgeは Pow(Top(X))→Top(X) という写像になる。つまり、位相の族に単一の位相を対応させる。

最小の位相

  • 定理[最小の位相] 任意の γ∈Pow(Pow(X)) に対して、γを含む最小の位相が存在する。


γに対して Γ⊆Top(X) を次のように定義する。

  • Γ := {τ∈Top(X) | γ⊆τ}

(\bigwedgeΓ)∈Top(X) は、γを含む位相のなかで最小である。

Pow(Pow(X)) のなかでのγの上方集合を γ と表すと、Γ := γ∩Top(X) となる。これを使うと:

  • top(γ) := \bigwedge∩Top(X))

この定義により、top は top:Pow(Pow(X))→Top(X) として well-defined である。

位相のジョイン

τ, ρ∈Top(X) のとき、(τ∪ρ)∈Top(X) とは限らない。例えば、X = {1, 2, 3} の上の位相として:

  1. τ = {{}, {1, 2}, {1, 2, 3}}
  2. ρ = {{}, {2, 3}, {1, 2, 3}}

τ∪ρ = {{}, {1, 2}, {2, 3}, {1, 2, 3}} は共通部分で閉じてない。

i | i∈I) が位相の族として、\bigcup_iτi は位相とは限らないが、

  • \bigcup_iτi∈Pow(Pow(X))

は保証される。写像topは Pow(Pow(X)) 上で定義されているから、

  • \bigveei | i∈I) := top(\bigcup_iτi)

は well-defined で、族がインデックス表示でなくても有効なので、

  • \bigvee:Pow(Top(X))→Top(X)

も well-defined である。Φ⊆Top(X) に対して、\bigveeΦ は、Φに入るすべての位相を含む位相のなかで最小のものなので、最小上界=上限=ジョイン である。

位相の生成系

任意の γ∈Pow(Pow(X)) に対して top(γ) = τ, τ∈Top(X) となる。このとき、

  • 位相τは族γで生成された。
  • 族γは位相τの生成系である。

と言う。族γが生成系になるための条件は特に何もない。任意の族が位相の生成系になれる。

任意の族ではなくて、特定の性質を持つ族に制限することもある。

  1. 位相の基底
  2. ミート(共通部分)で閉じた族=ミート半束
  3. 位相の準基底: 有限ミートの閉包をとると基底

ただし、これらの族でなくても位相の生成は出来るので、「特定の性質」に強い必然性があるわけではない。ほぼドーデモイイ話だろう。