ドミニオン
「ドミニオン」を採用した理由は:
- 小さく、
- よく統治されている。
ドミニオン〈dominion〉の定義は:
- 台は、小さい対称モノイド圏Cである。
- モノイド否定 (¬, δ) が載っている。
- 特定された組み合わせ基底 B⊆|C| を持つ。
モノイド否定〈monoidal negation〉は、写像 ¬:|C|→|C| と、二項(0, 1)-割り当て δ:|C|×|C|→Mor(C) の組み合わせで、
- ¬¬A = A (厳密対合性)
- ¬I = I
- δA,B:¬(AB)→(¬B)(¬A) は同型で、余結合律を満たす。δをコンパクト・ド・モルガン同型〈compact De Morgan isomorphism〉と呼ぶ。δ: ¬(AB) (¬B)(¬B)
¬は関手ではなく、δは自然変換ではないことに注意。¬は単項(0, 0)-割り当て、δは二項(0, 1)-割り当てに条件が付いたもの。
モノイド否定が、I以外の不動点を持たないとき対蹠的〈antipodal〉と呼ぶ。対蹠性〈antipodality〉は要求しない。¬A := A としてもモノイド否定の公理を満たす。これを自明なモノイド否定と呼ぶ。
すべての対称モノイド圏は自明なモノイド否定を持つので、モノイド否定を持つことは負担にはならない。対称モノイド圏の圏から、否定付き対称モノイド圏への埋め込み関手がある。自明否定で埋め込む関手をT、忘却関手をUとすると、次の随伴系がある。
- (η, ε)::SymMonCat+Neg←SymMonCat:T -| U:SymMonCat+Neg→SymMonCat
組み合わせ基底〈comnbinatrial basis〉はCの対象の部分集合Bで次の性質を持つもの。
次の言葉を使う。
テンソル・ドミニオン
ドミニオン (C, (¬, δ), B) にコンパクト閉構造が載せたものをコンパクト閉ドミニオンと呼ぶ。K-ベクトル空間で豊穣化させたドミニオンをK-線形ドミニオンと呼ぶ。
K-線形ドミニオンであり、コンパクト閉構造〈剛性 | 自律性〉を持つドミニオンをK-テンソル・ドミニオンと呼ぶ。体Kが明らかなときは、単にテンソル・ドミニオンと呼ぶ。
テンソル・ドミニオンは、双階付き〈二重次数付き〉テンソル代数 BGTens(V) の一般化になっていて、座標〈基底〉を使わないテンソル計算が出来る。構文として登場する記号は:
- 定数 I
- 単項演算記号 ¬
- 二項演算記号
- 自然変換記号 η, ε
- 二項演算記号 +, ・
- 二項演算記号
- 自然変換記号 Δ, ∇
Cがテンソル・ドミニオンのとき、L = Lin = C, ML = ML(L) が複圏、PL = PL(ML) が多圏として、L-ML-PL 系列を使ったテンソル計算ができる。
相反性
Bの要素がベクトル空間のとき、各ベクトル空間に基底(一般化基底)を指定すると、相反性が生まれてしまう。相反性がインビジブルで暗黙の仮定になってしまうのが色々と厄介。
相反性〈reciprocity〉は、次のような構造。
- γは、単項の(0, 1)-割り当て γ:|C|→Mor(C)
- γA:A→¬A
- γAは可逆〈同型〉
- γI = idI
- γ¬A = (γA)-1
- γAB = γAγB
相反性は計算の上では便利な構造だが、Aと¬Aを同一視できてしまうことが弊害になる。
相反性を持つドミニオン/テンソル・ドミニオンを、相反的ドミニオン/相反的テンソル・ドミニオン〈reciprocal dominion / reciprocal tensor dominion〉と呼ぶ。