集合論と圏論のメンタルモデル

共通する発想: 個体〈モノ〉は世界全体との関係性においてしか理解できない。

  • 集合論: モノ〈集合〉 $`a`$ が分かる ⇔ 宇宙内の任意のモノ $`x`$ に対して $`x\in a`$ かどうか完全に判断できる。
  • 圏論: モノ〈対象〉 $`a`$ が分かる ⇔ 圏内の任意のモノ $`x`$ に対して $`\mathrm{C}(x, a), \mathrm{C}(a, x)`$ が分かる。

食い違う発想: 個体の中身を見るか?

  • 集合論: 集合は中身を見ないと分からないので必ず中身を見る。中身がないアトムは(空集合以外は)ない。
  • 圏論: 対象の中身は(仮にあっても)見ない。対象はアトムとして扱う。


集合圏の対象類 $`|{\bf Set}|`$ に関して、集合論の立場と圏論の立場では齟齬が生まれる。

集合論:

対象は集合だから中身を見る。例えば、対象〈集合〉のイコール $`a = b`$ は次のようにして判断する。

$`\quad \forall x\in |{\bf Set}|.\, x\in a \Leftrightarrow x \in b`$

$`a\subseteq b`$ も所属関係により決まる。

圏論:

対象の中身を見ない。対象のイコール $`a = b`$ は、天下りに中身を見ないでも決まっている。$`a\in b, a\subseteq b`$ は圏論的には定義できない。代わりに、ポインティング写像 $`a:{\bf 1} \to b`$ と単射 $`i:a \to b`$ を使う。

集合圏を扱うときは、できるだけ圏論的に扱うが、ときに集合論的な手段に頼る。結果的に集合圏には、集合論の宇宙としての側面と、トポス(特別な圏)の側面が同居している。スッキリしないと言えばスッキリしないが、それはそんなもんだ。