圏係数の行列計算の話題は何度かしてるが、乗法的ドクトリンを係数域にとる形にしてみる。
ドクトリンは「圏の圏」の意味で使う。ドクトリンのメンバーである圏はすべて余完備であるとする。つまり、小さい圏からの関手は余極限を持つ。これはメンバーに関する要請。
ドクトリンDはモノイド積を持つとする。これはメンバーではなくてドクトリンが持つ構造。ドクトリンのモノイド積をとする。V, W∈D に対して VW が決まる。VW もドクトリンのメンバーだから余完備圏。
ドクトリンD上の乗法構造とは、ドクトリンのメンバー(対象である余完備圏)でインデックスされた関手の族νで、
- νV,W:V×W→VW
しかるべき公理を満たすもの。V×W は通常の直積圏。
一番簡単な乗法的ドクトリンは、単一のモノイド圏Vから直積で生成したドクトリンで、VV := V と定義する。νV,VはVが持つモノイド積。これを単一生成〈単生〉の乗法的ドクトリンと呼ぶ。すべての余完備モノイド圏は、単一生成ドクトリンと解釈できる。
A, B, C などは集合として、乗法的ドクトリンD内に係数圏を持つ行列の集合 MatV(A, B) を定義できる。行列自体は、A×B→|V| という表示を持つ。
この定式化のミソは、行列の積が、異なる係数圏を持っていても出来ること。それは、係数圏の全体が乗法的ドクトリンにより統制されているから。
- MatV(A, B)×MatW(B, C) → MatVW(A, C)
この定式化は、オートマトンの振る舞い関手を構成するときに使える。振る舞い関手の余域は、行列の圏がふさわしいだろう。
今まで、なんか不満な感じがしたのは、乗法的ドクトリンのような高次・高階の係数域を考えなかったからだろう。