やはり、「対数微分」より「モーレー/カルタン微分」のほうが誤解が少ないかも。
- ∂f = df/f = f-1df
が通常の微分 df とのおおよその関係>。
モーレー/カルタン微分演算子∂は、G→ΩL という層のあいだの演算子。層は、多様体M上で定義されるとする。
- ∂:G→ΩL (イタリックのG, Lに注意)
- For U in Open(M), ∂U:G(U)→Ω(U)A(U)L(U)
以下、順に説明。
Gをリー群、Iを開区間として、φ:I→G をなめらかな写像とする。Tφ:TI→TG は接写像。Gのリー環をLとすると、TG G×L という大域自明化が存在する。大域自明化を後結合して、TI→G×L、1-セクションと射影を前後に結合する I→TI→TG→G×L→L これにより、I→L という写像が得られるので、それを φ':I→L とする。これは準備。
M上で定義されてGに値を持つ関数の全体に点ごとの群構造を入れてゲージ関数群と呼ぶ。それを、G = GM とする。
- GM := C∞M(-, G) = ΓM(U, M(×G))
LをGのリー環として、M上で定義されてLに値を持つ関数の全体に点ごとのリー環構造を入れたリー環を、L = LM とする。
- LM := C∞M(-, L) = ΓM(U, M(×L))
x∈M と ξ∈TxM に対して、
- (∂f)xξ = ( f(x)-1・(fγ) )'(0)
と定義する。これらは、
- γ:I→M はなめらかな曲線で、γ(0) = x, (dγ/dt)(0) = ξ 。別な言い方をすると、γは、接ベクトルξの代表元(接ベクトル=曲線の同値類 という定義では)。
- f-1 は、fとGの逆元写像の結合。f-1(x) = f(x)-1、逆写像と混同しそうだけど。
- ・は群Gの積(乗法)。
次の書き方をする。
- (∂f)xξ = (∂ξf)x = (∂ξf)(x)
∂ξf は、モーレー/カルタン偏微分、あるいはモーレー/カルタン方向微分と言っていい。
∂f は、M上で定義された、リー環(ベクトル空間)Lに値を持つ微分形式とみなせるので、fのモーレー/カルタン微分形式(モーレー/カルタン微分演算子の値である微分形式)と呼ぶ。
G(U) の要素を(U上の)ゲージ関数と呼べば、モーレー/カルタン微分形式は、ゲージ関数ごとに定義される。モーレー/カルタン微分演算子を利用したゲージ関数の微分計算は、モーレー/カルタン微分計算〈Maurer–Cartan differential calculus〉。
モーレー/カルタン微分計算の上に、主層の微分計算=共変モーレー/カルタン微分計算=接続付き主層の理論 が展開できる。
多様体M上のG-モーレー/カルタン微分計算と、G-主層の微分計算の公理化は、マリオス/バシリウーがやっている。これは、非アーベル微分計算になっている。