新しい概念:障害子、アップ作用素、括弧積マグマ、切り捨てシュバレー/アイレンベルク

線形等式的法則〈linear equational law〉に関しては、障害子〈obstructor〉を考えることができる。あらゆる法則に関して障害子を考えてみる。たぶんいいことある。

階付きベクトル空間の自己射で、次数1のものをアップ作用素と呼ぶ。アップ作用素を備えた階付きベクトル空間をアップ作用素付き階付きベクトル空間〈graded vector space with up oprator〉と呼ぶ。アップ作用素付きベクトル空間で、作用素が平方ゼロであるとき、余鎖複体と呼ぶ。鎖複体も同様に定義できる。

階付き代数にアップ作用素があり、アップ作用素が階付き導分のとき、導分階付き代数〈derivation graded algebra〉と呼ぶ。導分階付き代数のアップ作用素=階付き導分が平方ゼロになっているとき、微分階付き代数〈differential graded algebra〉。

反対称双線形写像括弧積〈ブラケット | bracket〉と呼ぶ。括弧積を持つベクトル空間を括弧積線形マグマ〈bracket linear magma〉あるいは括弧積マグマ〈bracket magma〉と呼ぶ。括弧積がヤコビ恒等式を満たすとき、その括弧積マグマはリー代数になる。

リー/ラインハート代数は、結合的可換代数と括弧積マグマのペアで、加群構造(スカラー積)と、括弧積マグマから導分空間への線形写像アンカー写像〉との組。ヤコビ恒等式、アンカー写像が括弧積を保存することは要求しない。それぞれヤコビ条件括弧積条件として別に扱う。

シュバレー/アイレンベルク関手は、リー/ラインハート代数の圏からアップ作用素付き階付きベクトル空間の圏への関手として定義する。微分形式の階付きベクトル空間とシュバレー/アイレンベルク作用素を対応させる。とりあえずは、微分形式の空間の積は考えない。シュバレー/アイレンベルク作用素が平方ゼロになることはまったく保証されない。シュバレー/アイレンベルク作用素の成分ごとの平方ゼロ性を、0-1平方ゼロ、1-2平方ゼロ、‥‥ のように呼ぶ。

次の命題が成立しそう。

  • シュバレー/アイレンベルク作用素が 0-1平方ゼロ ⇔ リー/ラインハート代数が括弧積条件を満たす。
  • シュバレー/アイレンベルク作用素が 1-2平方ゼロ ⇔ リー/ラインハート代数がヤコビ条件を満たす。

\Omega_{\mathrm{CE}} をシュバレー/アイレンベルク関手とする。n次以上の部分を切り捨てて(ゼロベクトル空間に置き換えて)考える場合を \Omega_{\mathrm{CE}, n} と書いて切り捨てシュバレー/アイレンベルク関手〈truncated Chevalley-Eilenberg functor〉と呼ぶ。

シュバレー/アイレンベルク関手の域圏・余域圏は色々と変えることができる。これによりシュバレー/アイレンベルク関手の変種〈variant〉が作れる。

\xymatrix@R+1pc{
  {\bf LieRineAlg} \ar[r]^{\Omega_{\mathrm{CE}, n}}
  &{\bf UpGrVect}
\\
  {\mathcal{C}}  \ar[r]^{\Omega'_{\mathrm{CE}, n}} \ar[u]
  &{\mathcal{D}} \ar@{-->}[u]
}

\Omega'_{\mathrm{CE}, n} がシュバレー/アイレンベルク関手の変種。破線矢印は忘却関手。一例として、括弧積マグマのシュバレー/アイレンベルク関手:

\xymatrix@R+1pc{
  {\bf LieRineAlg} \ar[r]^{\Omega_{\mathrm{CE}, n}}
  &{\bf UpGrVect}
\\
  {\bf BraMag}  \ar[r]^{\Omega'_{\mathrm{CE}, n}} \ar[u]
  &{\bf UpGrVect} \ar@{=}[u]
}