対角公式、抽象シグマ代数

次のどうってない公式が、実は重要だと気付いた。

  • For A, B⊆X, Δ-1(A×B) = A∩B (対角公式)

積事象が、A×B か A∩B かが不明なのは、この公式で同一視しているからだろう。

A, B を可測空間Xの事象〈可測集合〉(シグマ代数の要素)だとして考えると次の可換図式がある。

\require{AMScd}
\begin{CD}
(\Sigma X)\times(\Sigma X) @>{(\times)}>> \Sigma (X\times X) \\
@|                                        @VV{\Delta^{\dashv}}V \\
(\Sigma X)\times(\Sigma X) @>{(\cup)}>>   \Sigma X \\
\end{CD}

ここで、 \Delta^\dashvTeXで、^\dashv としている)は、逆像。

可測空間Xに対して、そのシグマ集合代数を抽象シグマ代数とみなすことを X \mapsto ΣX だとすれば、次の関手がある。

  •  \Sigma : {\bf Meas} \to {\bf \sigma\mbox{-}Alg}

σ-Algは抽象シグマ代数の圏で、高々可算演算∪と単項演算(-)cが適切な公理を満たすもの。

Measのモノイド積を独立積〈independent product〉と呼ぶ。記号は×か\otimesのどっちか。とりあえず×にする。Σは、独立積をテンソル積に移すモノイド関手。関手Σの射部分を  (\mbox{-})^\dashv と書く(習慣)。

  •  \Sigma({\bf 1}) = {\bf 1}
  •  \Sigma(X\times Y) = (\Sigma X)\otimes (\Sigma Y)
  •  (F\times G)^\dashv = F^\dashv \otimes G^\dashv

Δは、マルコフ圏のコモノイド供給〈コモノイド・モダリティ〉構造の一部。関手Σは反変だから、抽象シグマ代数の圏にモノイド供給を与える。冒頭の対角公式は、このような文脈で考えるべきだろう。