次の日本語の記事を読んだ。
- 有理力学-新しい連続体力学 第2章 有理連続体力学
- 徳岡辰雄
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsms1963/23/254/23_254_1022/_pdf
気になっていた言葉の徳岡さん(故人)による解釈:
- 物体 B : 多様体
- 粒子 X : Bの点、物体点
- 質量 : B上の測度または体積形式(最高次元の微分形式)
- 配置〈configuration〉 : Bからユークリッド空間Eへの埋め込みの像
- 領域 : Bからユークリッド空間Eへの埋め込みの像
- 運動 : 時間パラメータを持つ、BからEへの写像 T→Emb(B, E)
- 位置 : Eの点
- 速度 : Eの接ベクトル
- 基準配置〈reference configuration〉κ : 選ばれた配置
- 変形〈deformation〉χκ : (後述)
配置が写像かその像か不明確だけど、次のように解釈すべきだろう。
- 配置 ∈ Emb(B, E) : 多様体BからEへの埋め込み
- 領域 ⊆ E, 領域 = 配置の像
昨日言及したダニエル・アウブラム〈Daniel Aubram 発音はわからん〉著作と比較してみる。
アウブラムは、配置(徳岡さんのconfiguratio)をplacementと読んでいて、configuration = deformation としていた。ところが、アウブラム/特岡ともに、変形〈deformation〉がハッキリしない概念で:
- 基準配置(写像)κの像である領域を U⊆E 、絶対時間をTとして、χκ:U×T⊃→E を変形と言っているようにも思える。
- カリー化すれば、T→Emb(U, E) となるので、変形と(特岡の)運動は同じように思える。
- アウブラムの絵では、特定の2つの時点 a, b∈T に対して、χκ(-, a) の像とχκ(-, b) の像のあいだの同型写像を変形と呼んでいるように思える。
次のようにしよう。
- 曖昧性が激しい、configurationは使わない。
- B→E という写像を配置〈placement〉と呼ぶ。
- 選ばれた配置 κ:B→E を参照配置〈reference placement〉と呼ぶ。
- μ:T⊃→Emb(B, E) を運動〈motion〉と呼ぶ。B = 1 のときは、曲線/パスも同義語。
- μの反カリー化 ν:B×T⊃→E も運動と呼ぶ。
- χ(B) = U ⊆ E として、BをUで置き換えた T⊃→Emb(U, E), U×T⊃→E を変形〈deformation〉と呼ぶ。
- 運動と変形は酷似している。物体多様体Bと参照配置Uの違いだけ。
- アウブラムの意味の変形は、移動〈transport | displacement〉と呼ぶ。移動には時間パラメータは入らない。
この用語法でも問題はある。
- 移動が、平行移動やリー移動の用法と整合しないかもしれない。平行移動やリー移動を、こちらの意味に合わせる、ってのもあるが。
- 変形〈deformation〉=時間パラメータあり、変位〈displacement〉=時間パラメータなし、とする案もある。
- 変形は流れと同じだから、流れ〈フロー〉と呼んでしまう案もある。
変形=流れ=移動 が自然かも知れない。変位〈displacement〉が中間をなくして、時間パラメータがない写像。
写像の域が物体多様体か参照領域かで違うのが鬱陶しいのだが、その違いを無視して:
- 配置=配位: 域がB(またはU)
- 変位: 域が B + B(または U + U)
- 変形=移動=運動=流れ: 域が B×Tの部分 (または U×T の部分)
時間の空間T側で考えると、
変位 = 変形(∂I) という意味で、コバウンダリδがあって、δ変形 = 変位 = (配置 - 配置) かも知れない。
写像空間で考えると:
- 配置空間 = Emb(B, E) or Emb(U, E)
- 変位空間 = Emb(B, E)2 or Emb(U, E)2
- 変形空間 = MapT(-, Emb(B, E) or MapT(-, Emb(U, E))
変形空間は、時間の空間T上の無限次元多様体を値にする層なのかも知れない。