ゲージ変換としてのガリレイ変換

昨日書いた記事 "ゲージ理論としてのノル/ニュートン力学 - (新) 檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編" に補足。昨日記事の大筋はいいのだが、若干の誤認が含まれる。

ニュートン場=ニュートン・ゲージ系=ニュートンユークリッドガリレイ・ファイバーバンドルは、射影 τ:WT 典型ファイバー E で与えられる。底空間=絶対時間 T も、典型ファイバー=標準空間 E も、アフィン構造を持つのが特徴的で、それぞれの移動〈transport | translation | displacement | shift | 変位〉ベクトル空間を V, D とする。

Tに働くアクティブ〈能動的〉変換群は時間並進群、Eに働くアクティブ変換群はユークリッド・アフィン群 \stackrel{\sim}{=} R3|×SO(3) (半直積)。これらの群がアクティブ対称性の群になる。

微妙なところは、ゲージ=局所自明化=バンドルチャートをどう捉えるか。一般に、Eがバンドル全空間、E|U がEのストリップ〈短冊〉だとして、E|U→U×F(Fは典型ファイバー)をゲージと呼ぶか、それとも E|U→V×F ををゲージと呼ぶかの差異がある。U→V は底空間の多様体チャート。

ゲージが E|U→U×F のときは、ゲージのトランジションは、ゲージ関数 U→Aut(F) で定義できる。しかし、ゲージが E|U→U×F のときは、ゲージ関数だけではゲージのトランジション(パッシブ変換)を定義できない。

ゲージ変換とは、ゲージのトランジション(取り替えの影響)のことだから、ゲージの定義が変わればゲージ変換の定義も変わる。ゲージに、底空間の開集合からの多様体同型が入るとき、底可変ゲージ〈base movable gauge〉と呼ぶことにする。底可変の対語は底固定〈base fixed | identity-on-base〉。

慣性系=ガリレイ・ゲージは、底可変ゲージになる。したがって、ガリレイ・ゲージのトランジション(パッシブ変換)であるガリレイ変換も底可変なトランジションになる。V, V'をRの開集合として、ガリレイ変換は V×R3→V'×R3 という底可変バンドル射になり、底写像 V→V' は1次元のアフィン写像になる。

慣性系=ガリレイ・ゲージが大域ゲージのときは、ガリレイ変換の全体は群になる。しかし、局所ゲージまで考えると、ガリレイ変換の全体は群ではなくて亜群になる。これは、底写像の全体が群ではなくて亜群なのだから当然である。

通常は、大域ガリレイ・ゲージだけを考えるので、ガリレイ・ゲージのあいだのトランジションであるガリレイ変換の全体は群(ガリレイ群)になる。

底固定でないゲージ・トランジションであっても、ゲージ関数=ヤコビアンを考えることはできる。ゲージ関数群も考えることができるが、亜群としての結合は、ゲージ関数群の積(単純な点ごと積)ではない。合成関数の微分公式=チェーン法則に従った積になる。

  • (定義よりパッシブな)ゲージ変換の全体が亜群であるときは、ゲージ関数の積はチェーン法則で計算する。

反省点は、局所ゲージで底可変なゲージに対するトランジション(パッシブ変換)の全体がなすゲージ変換亜群の計算がハッキリとしてなかったこと。特に、ゲージ関数〈ヤコビアン〉とゲージ変換の関係が曖昧だったこと。