ゲージ理論としてのノル/ニュートン力学

ノル〈Walter Noll〉の論説をチラチラ読んでいる。

目次:

  • [0] Introduction 1
  • [1] On the Illusion of Physical Space 5
  • [2] On Material Frame Indifference 13
  • [3] Updating The Non-Linear Field Theories of Mechanics 23
  • [4] The Theory of Simple Semi-Liquids, a Conceptual Framework for Rheology 41
  • [5] Nematic Semi-Liquids 59

[0] Intrudoction と [3] Updating The Non-Linear Field Theories of Mechanics をだいたい読んだ。それと、アウブラムの本の最終章

徳岡辰雄の2つの論説、

二番目は、次の学会誌の連載

PDFの論文タイトルに空白が入っているので検索が困難。"site:www.jstage.jst.go.jp 連続体力学 Noll"でなんとか探した。こういうのは困るなー。

さてと、ノルの主張で「ニュートン絶対空間は幻想だ」([1] On the Illusion of Physical Space)があって、最初理解できなかったが、次のように考えればよいと分かった。

ゲージ変換群の解釈が電磁場などとは違う。それを説明するためは、バンドル射を分類しておく。

  1. 底固定バンドル射〈base fixed bundle morphism〉 : 一般バンドル射の底写像が恒等射
  2. 底変動バンドル射〈base {unfixed | movable} bundle morphism〉 : 底写像が恒等とは限らないバンドル自己射

電磁場のゲージ変換群は、底固定バンドル自己同型射の群 Bdl[M]Aut(ξ) 、ニュートン古典力学のゲージ変換群は、底変動バンドル自己同型射の群で、底写像〈base map〉が底空間のアフィン同型射であるもの。

ニュートン古典力学のゲージ場をニュートンと呼ぶとして、ニュートン場はマクスウェル場と違う側面があって面白い。ゲージ場の理解も深まった。

ニュートン場の構成素:

  1. 底空間: 1次元のアフィン空間=絶対時間、アフィン構造からの平行移動を持つ。
  2. 典型ファイバー: 3次元ユークリッド・アフィン空間、形容詞「ユークリッド」はユークリッド内積を持つことを意味する。ユークリッド・アフィン構造からの内積保存平行移動を持つ。
  3. ゲージ群: ユークリッド・アフィン群、平行移動と回転の半直積群、ユークリッド・アフィン空間に計量保存変換群として作用する。
  4. 時開区間: 底空間の座標近傍で位相基底、座標=底チャートの近傍は時開区間を使う。
  5. 全空間: ニュートン時空=ニュートン事象世界〈event world〉
  6. ゲージ変換群: 典型ファイバーに作用するユークリッド・アフィン群と底空間に作用する時間アフィン・トランジション関数を、バンドルチャートのあいだの受動変換〈passive transform{ation}〉の群と考えたガリレイ変換群

ニュートン場の許容された(選ばれた)局所自明化が慣性系/慣性枠で、慣性系のあいだの受動変換がガリレイ変換=ゲージ変換となる。厳密に言えば、受動変換としてのガリレイ変換=ゲージ変換は、全体としては群にはならず亜群となる。

ガリレイ亜群が、受動的変換群からなる亜群である点は非常に面白い(アハッ)。

さて、Bをノルの意味の物体系〈{continuous} body system〉だとして、Iを時区間として、Bの運動(フロー形式)を φ:B×I → W(ニュートンの事象世界) とする(パーティクル形式では I→Emb(B, W))。ニュートン時空=事象世界 Wは、計時写像 τ:W→TTニュートンの絶対時間)を射影として持つ。フロー形式の運動 φは、実はバンドル射になっている。時区間Iは絶対時間Tの部分集合なので、運動φは底包含的バンドル射〈inclusion-on-base bundle morphism〉になっている。

ニュートン力学とは、ニュートン場のなかのB-運動の空間を定義し、適切な運動の{法則 | 律 | 関係 | 方程式}を定義して、その法則で許容される運動を調べるstudyである。運動は、底空間である絶対時間上のファイバーバンドルのセクションである。

ニュートン力学は、ニュートン場=ニュートンユークリッドガリレイ・ファイバーバンドルのゲージ理論