連続体力学独特の用語法

「連続物質の分類と系譜 by 徳岡辰雄」のp.3に、

「対称群は直交群である」という奇妙な文が出てくる。「対称群」の意味が違うのだ。

独特 普通
対称群 対称性の群、ゲージ変換群
同格群〈peer group〉 置換群
三斜群〈triclinic group〉 2次置換群 {1, -1}
ユニモジュラ群〈unimodular group〉 ?
二点テンソル 追記参照

対称群は、理論なりシステムなりの対称性を記述する群のこと。ゲージ理論では、ゲージ群またはゲージ変換群に相当する。ただし、ゲージ変換も意味が曖昧で、パッシブ・ゲージ変換とアクティブ・ゲージ変換は違うし、群になるとも限らない。対称も、同変/不変/ツイスト同変〈twisted equivariance〉などのバリエーションがあり、理論・システムの対称性の定義は難しい。また、無差別性〈indifference〉と(広義の)同変性〈equivaliance〉の2つの概念は区別すべきだ。

対称群が対称性の群なので、通常の対称群を同格群と呼ぶのだろう。もちろん、置換群でもいい。

三斜群は、結晶系 Triclinic crystal system〈三斜晶系〉に起因する言葉らしい。群を結晶点群〈crystallographic point group〉と考えるわけだな、たぶん。

ユニモジュラ―行列の定義は、「整数行列で、その行列式が +1 あるいは −1 である行列」だが、整数条件を外して、実数の場合にもユニモジュラー群を使っている。特殊線形群行列式が1だが、-1も認めるので特殊線形群とは違う。

ノルの意味の indifference超重要だと思う。直訳すれば「無関心」。徳岡辰雄は「無差別性」と訳しており、矢富盟祥〈やとみ・ちかよし〉は「客観性」と訳している。意味的には「非依存性」「独立性」でもいいかもしれない。

無差別性は、アクティブな変換に対する対称性/不変性/同変性とは違い、座標/観測者/フレーム/ゲージなどを取り替えたときに、パッシブ変換に対して、法則〈系の支配方程式 | 構成方程式〉が変わらないことを意味する。観測者の主観によらないから客観性(by 矢富)とも言える。現象や法則が、「気のせい」ではなくて実在することを保証する条件。

他に:

  • reference → 基準 : 「参照」より「基準」が多い。
  • uniform → 一様
  • homogeneous → 均一 : 「均質」でもいいのかな? 数学では「等質」もある。
  • current → 流通 : 「現在」「現」もある。時間変動するときの「とある時点の」という意味。流通配置〈流通配位〉として出てきた。

「流通」に関しては、流通座標〈current coordinates〉がある。まったく意味不明の用語で、「最初に与えられた座標とは別な座標」くらいの意味だろう。ワールド座標に対するローカル座標に近いが、「そうだ」と断言もできない。

[追記]二点テンソル〈two point tensor〉はホントに独自な用語だ。ここで言うテンソルテンソル場=テンソルバンドルのセクションのこと。さらにテンソルバンドルとは、いくつかのベクトルバンドルテンソル積で与えられるベクトルバンドルのこと。

VがM上のベクトルバンドル、WがN上のベクトルバンドルとする。f:M→N があると、WをM上に引き戻せる。引き戻しバンドルを fW on M とする。テンソル積 V\otimesfW はM上のテンソルバンドルになる。こうやって作ったテンソルバンドルのセクションを二点テンソル{場}?と呼ぶ。[/追記]