ゲージ変換亜群のヤコビ計算

ファイバーバンドル (E, B, F, π) のゲージとして、E|U→V×F の形のバンドル同型射をとる。ゲージは、多様体の同型射 U→V (V⊆Rn)に載ったバンドル同型射になる。

ゲージ群としては、最も広い変換群である Aut(F) を取る。Aut(F) の定義の詳細は割愛するが、ファイバー射の圏Fは、Man上に具象的かつMan豊饒化されている必要がある。

2つのゲージ E|U→V×F, E|U→V'×F があり、ゲージの取り替え〈change of gauge〉があると、対応するトランジション・バンドル射 V×F→V'×F がある。このトランジショントランジション・バンドル射〉の底写像 φ:V→V' は多様体の同型射で、ファイバーごとのファイバー射はすべてファイバー同型となる。したがって、バンドル射に対応するヤコビアンは、ゲージ群 Aut(F) に値を持つゲージ関数(ゲージ群値の関数)となる。

局所自明化を持つような E|U⊆E をファイバーバンドルのストリップ〈strip〉と呼ぶ。ストリップごとに、ゲージの集まりと、パッシブ・ゲージ変換の集まりが決まって、全体として亜群になる。ストリップは底空間の開集合から決まるから、開集合に対して亜群が対応する。つまり、亜群値のスタックになる。

ストリップをひとつ固定したときの、(対象:ゲージ, 射:トランジション) の亜群を、局所パッシブ・ゲージ変換亜群と呼ぶ。{局所パッシブ・}?ゲージ変換=トランジション。この局所ゲージ変換は、定義よりパッシブなので、パッシブ亜群(パッシブ変換が射である亜群)となる。

特定ストリップに対する局所ゲージ変換亜群の計算では、自明バンドルのあいだのバンドル同型射をヤコビアン形式で表現する。底写像φとヤコビアン・ゲージ関数gのペア (φ, g) でバンドル同型射を表現する。ヤコビアン形式での亜群の計算〈Jacobian calculus | ヤコビ計算〉は、

  1. 結合は、ヤコビアンのチェーン法則で計算する。
  2. 逆は、ヤコビアンの逆公式で計算する。

ゲージ族〈family of gauges〉が被覆族〈covering family〉のとき、自明バンドル族に載ったセクション族が、トランジションと整合するとき“ゲージ不変量”となる。ただし、このゲージ変換はパッシブ変換だから、ゲージ不変の意味はノルの言う「フレーム無差別性〈frame indifference〉」になる。アクティブなゲージ変換に対する不変性はまた違う。

  • アクティブ・ゲージ不変性、アクティブ・ゲージ同変性
  • パッシブ・ゲージ不変性=ゲージ無差別性=ゲージ非依存性=ゲージ客観性*1

「パッシブ・ゲージ変換=チャートのトランジション」と「アクティブ・ゲージ変換=ファイバーバンドルへの作用」の区別はほんとに重要だ。

*1:indifferenceを客観性を訳す人がいる。