ヤコビ微分圏

まず、デカルト微分圏への不満

  1. 二階の微分に関する2つの公理がわかりにくい。もっと直感的な公理から定理として導きたい。
  2. 微分の局所性が定式化されてない。これはマズイと思う。
  3. 微分作用素の線形性は公理じゃないだろう。
  4. 偏微分が明示的に定義されてない。

ヤコビ微分圏はこれらを解決する。

  1. 二階の微分に関する公理は偏微分に関する公理に置き換える。
  2. 微分の局所性を明示的に定式化する。
  3. 微分作用素の線形性は、別な公理から導く。
  4. 偏微分は明示的に定義する。

ヤコビ微分圏に特徴的な構成素は:

  1. 線形対象と線形射からなる線形部分圏 L
  2. 開集合の定式化である、開包含射の部分圏 O と開包含射 oiX,Y:X→Y 。局所性は、開包含射で定義する。
  3. 圏論的構成子である線形台〈linear support〉 lin:|C|→|L|
  4. 線形内部ホム [,]
  5. 線形内部ホムに関連する演算子 ・(適用), *(内部結合), △(内部ペアリング)、▽(内部コペアリング)、\oplus(内部双積)。外部双積もあるが、デカルト積×で代用する。
  6. ヤコビ微分コンビネータ J:C(X, Y)→C(X, [lin(X), lin(Y)])
  7. 基本射: 線形部分圏内のデカルト積の構造射 λA, ρA, αA,B,C、すべての開包含射(恒等射を含む)、左線形射/右線形射、ポイント射(1からの射)
  8. 基本演算: 直積×(線形部分圏では双積)、結合\circ
  9. 偏微分の交換公理

次のものは定理として出る。

  1. 制限に対する微分の局所性(開包含の微分公理より)
  2. 微分作用素微分コンビネータ)の線形性
  3. 双線形写像微分公式
  4. ライプニッツ法則
  5. 偏微分・全微分の公式
  6. 逆関数微分公式