主層の対数共変微分=接続付き主層

ベクトル微分系と対数微分系 - (新) 檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編 の続き。

抽象微分多様体(ADM)は、一般に

  • AM = Ω0M -- Md0 → Ω1M -- Md1 → ... -- Mdr → ΩrM

という層の系列で決まる。rを抽象微分多様体次数〈degree〉と呼ぶことにして、次数rの抽象微分多様体の圏を ADM(r) とする。特に、ADM(0) は、可換環付き空間の圏、あるいは、位相可換環付き空間になる。

MがADMのとき、M上の対数微分〈logarithmic differential〉は、G-群の構造層GMから Ω\otimesL への演算子∂で、モーレー/カルタン微分法則を満たすもの。

  • ∂(gh) = ρ(h-1)(∂g) + ∂h in Ω\otimesL

ρは、随伴表現(共役作用の微分) ρ:G→Aut(L) を Ω\otimesL への表現に自然に拡張したもの。

M上の対数微分をひとつ固定すると、抽象対数微分多様体〈abstract logarithmic diffrential manifold | ALDA〉ができる。ALDA Mは、基礎群〈ゲージ群〉Gとゲージ関数群GMを持つ。リー代数Lは、A-加群であり、群層Gリー代数層になっている。基礎群〈ゲージ群〉がGである抽象対数微分多様体G-抽象対数微分多様体〈G-ALDA〉と呼ぶ。

Mが対数微分∂を持つG-ALDAであるとき、M上の対数共変微分〈logarithmic covariant diffrentiation system〉を定義できる。対数共変微分系は、M(の台位相空間)上のG主層P(主空間の層)であって、微分作用素 D:P→Ω\otimesL を持つもの。Dは、モーレー/カルタン法則を満たす。

  • D(s・g) = ρ(g-1)(Ds) + ∂g

対数微分は構造層Gで定義され、対数共変微分は主層Pで定義される。値はどちらもΩ\otimesLにとる。

対数共変微分を備えた主層を、接続付き主層〈principal sheaf with connection〉と呼ぶ。

G-抽象対数微分多様体Mを固定して、接続付き主層の圏を考えると、これが、だいたいM(の台位相空間)上のGゲージ場の圏になるだろう。「だいたい」の意味は、ベクトル層をアタッチしてないから。整合する接続付きベクトル層を一緒に考えれば、連携ゲージ場〈coupled gauge field〉になる。

対数微分のベースに、(主層の)対数共変微分を考えるのは、微分をベースに直線層の共変微分を考えるのと似ている気がする。