分裂完全列は使える

主バンドルとは限らない一般の構造群無指定のファイバーバンドルでも、分裂完全列により接続を定義することができる。主バンドルとは違い、大域群作用に関する同変性は不要。

この例は、線形代数ベクトルバンドル理論 の良い例。

(E, B, F, π)がファイバーバンドルのとき、全空間の接バンドル TE の部分ベクトルバンドルとして、垂直バンドル(正確には、垂直接ベクトルバンドル)を定義する。

  • VE = Ker(Tπ), Tπ:TE→TB

ベクトルバンドルは、線形代数と同様に定義できる。VE⊆TEなので、包含写像ベクトルバンドル射として定義できる。

  • i:VE→TE over B

包含射は単車だから、とても短い〈very short〉完全列ができる。

  • 0→VE→TE exact over B

ベクトルバンドル準同型定理から、次の短完全列ができる。

  • 0→VE→TE→TE/VE→0 exact over B

一方で、次のベクトルバンドル同型がある。

  • TE/VE \stackrel{\sim}{=} π#TB

π#TB は、底空間の接バンドルの射影による引き戻しバンドル。同型だから、先の短完全列は次の形でもよい。

  • 0→VE→TE→π#TB→0 exact over B

これが分裂〈split〉するのは2つのケースがある。

  1. レトラクト射 r:TE→VE が存在する。左分裂する。
  2. セクション射 s:π#TB→TE が存在する。右分裂する。

レトラクト射rは、全空間E上のベクトルバンドルVEに値を持つ1次微分形式とみなせる。

  • r∈Ω1(E, VE)

もちろん、微分形式rは層化(層論化)できる。

線形代数の標準的議論から、微分形式=ベクトルバンドル射 r の核バンドルは、もとの包含射の像バンドルと一致する。

  • Ker(r) = Im(i) over E

埋め込みベクトルバンドル射 VE→TE から誘導される標準的完全列の分裂が、ファイバーバンドルの接続になる。これは単純でいい。

Ker(r) = Im(i) =: HE と置くと、HEはTEの部分ベクトルバンドルになる。定義から、VEとHEは互いに補空間になり、TEの直和分解を与える。次の概念は同じになる。

  1. VE→TE から誘導される完全列の分裂
  2. レトラクト形式=接続形式 r∈Ω(E, VE)
  3. VEに対する補空間バンドルHV
  4. TEの直和分解
  5. TEの射影ペア (v, h):VE←TE→HE